「僕の宝物」
茨城県 中学校一年
六月三十日。我々は夜明け前に集合した。朝の涼しさが心地良い。これから自転車で旅に出る。今回の目的地は東京スカイツリーだ。茨城県から片道六十六キロ強。
メンバーはいつも旅のリーダー的な存在のアサヒ、二人目はトンネルで奇声を上げる奴だが、妹想いの良い一面も持っている徳永、そして僕である。
日が昇るにつれ、汗がふき出し、全身ベタベタになり最悪だ。それでも順調に進み埼玉県に入った。ここから江戸川沿いのサイクリングロードをひたすら走る。走りやすい道ではあるが、景色が変わらず飽きるものである。徳永は、奇声を上げることもなく
「もうこの道、やだ」
と吐きすてるように言った。僕も同じ気持ちだった。アサヒは先だけを目指して走っていた。
汗だくで七時間かけ、漸くスカイツリーに到着した。近くで見ると巨大という言葉ですら当てはまらない。圧倒された。しかし正直なところ、ただここに留まり休みたかった。帰路を考え、わずかな滞在を決断した。
帰り道は壮絶だった。自転車を漕ぎ過ぎて尻は痛く、足は痛いのか、熱いのか、麻痺しているようだった。冷却スプレーをかけた。更に脇腹も痛くなり始めた。この痛みで、全身を使っているとわかった。
とうとう自転車を投げだし我々は道端に座わり込んでしまった。僕は自然とお菓子の袋を開けていた。皆はすぐさま袋に手を入れ、頬張った。濃厚なBBQの味付けでサクサクとした食感がやみつきになる。まるで宝物が入っているかのように小さな袋に三人は手を突っ込んだ。段々と皆は笑顔に変わった。我々は再び自転車を漕ぎだした。
走行距離百四十キロ走行時間十五時間三十六分。達成感に満ちていた。最高の仲間だ。