「バタークッキー」
茨城県 中学校三年
気がつくと私はリビングにいた。けれど雰囲気はどこか違う。どうしてここにいるのか分からなくて戸惑っていると、キッチンからバターの匂いが漂ってきた。なんとなく懐かしく感じて、ふとキッチンへ足を進めた。すると、そこには女の人がいた。私に気が付くと柔かい笑みを浮かべて、
「椅子に座って待っててね。」
と、言った。リビングに戻って少しすると、女の人がクッキーの乗ったお皿を運んできた。私はどうしてか、その人とたくさんおしゃべりをしたくなった。その人が座ると、私の口は知らぬ間に喋り出していた。その人はとても嬉しそうに話を聞いてくれた。段々と減っていくクッキー。最後の一つになった時に、ボーン、ボーンと古時計がなった。目をまんまるにして驚いていると、ふと自分の名前を呼ばれた。顔を向けるとその人は言った。「あなたが幸せそうでよかった。ありがとう。」そう言って、すっ・・と消えていった。何がなんなのかわからず、混乱していると、自分の意識も遠ざかっていくような気がした。結局、あの女の人は誰だったのかな。そう思っていると、ふとあのクッキーを思い出した。そうだ。あのクッキーは・・・!
「お母さん・・」
目を開ければそこはいつものベッドだった。窓の外では小鳥がさえずっていて、差し込んでくる日の光が眩しい。体を起こすと自分の頬が濡れていることに気付いた。枕にも少し跡が染みている。夢で見たあのクッキーは、お母さんが昔、よく作ってくれたクッキーだった。でもどうして?不思議に思っていると、カレンダーが目に入った。今日の日付には赤い字で何か書かれている。あぁ、今日は・・
「・・お母さんの、命日・・。」
静かな朝、何処からか、バターの匂いがした。
